I'm home!



「あら、ここにいたの」
ヴェーダのシステムルームから自室に戻るとき、ティエリアはスメラギに声をかけられた。
「何か用ですか?スメラギ・季・ノリエガ」
「私じゃないわ。ロックオンとアレルヤが、あなたを捜してたわよ」
「!!─失礼します!」
その言葉に慌ててティエリアは踵を返した。
――しまった。
つい、データチェックに集中して時間を忘れていた。
彼らが帰ってくる前に自室に戻っているつもりだったのに。
今回のミッションはティエリア以外の三人で行われた。
問題なく進むそれに、待機するまでもなく、ティエリアは次のミッションへのチェック等をしていたのだ。

このまま部屋に行っても、どちらかがいるだろう。
いや、捜しているなら上手くすれば避けられるか。
しかし、もう、二人ともに見つからずにいられる可能性はほとんどない──
「ティ〜エリア!」
「っ!」
突然、左側の通路から脳天気な声と共に現れた男に捕まえられてしまった。
ロックオンだ。
「ただいま。ティエリア」
やや後ろから捕まえていたティエリアを強引に正面に向かせて、強く抱きしめる。
「ちょっ、ロック、オ…」
逃れようともがくティエリアの顎を捕らえて上向かせる。
それが何を意味するか分かっているティエリアは、手のひらで思いっ切りロックオンの顔面を押し戻す。
「─痛てっ」
痛みに顔をしかめつつ、それでも腰に廻した手を放さない根性はどこからくるのか。
「ひでぇなぁ」
「何考えてるんですかっ通路で!」
「じゃ、部屋へ」
「お断りします!」
部屋なんかに行ったらどうなるか。
「え〜っ、じゃあ、これで我慢する」
言うと、ロックオンはティエリアの左頬に口付けて、
「ただいま、ティエリア」
と、さっきも言ったことを、にっこりと繰り返した。
「……」
「─おかえりって言ってくれねぇの?」
「言いません」
きっぱりと断られて、ロックオンは見るからにしゅんとする。
そんな顔しないでほしい。

ティエリアだとて、本当はそれくらい言っても良いと思っているのだ。
少し前までは応えていたのだから。
けれど今はそれを言うと、必ず、『おかえりのキスは?』と迫ってくるのだ。
初めは言葉だけだったのに。
おまけにどういう訳か、アレルヤまでが同じことをするのだ。
ティエリアが二人を避けようとしていたのはそのためだ。
帰ってきてすぐに会ったら、一騒動になる。
だから、ある程度の時間をおきたかったのだ。

「とにかくっ、放して下さいっ」
半ばロックオンの身体を突き放すようにして、やっと、その腕の中から逃れる。
が、その反動で前方にいた誰かにぶつかった。
えっ、と思う間もない。
「ティエリア、ただいま〜」
と、嬉しそうな声を聞いたときには既にアレルヤの腕の中。
「無事完了したよ」
「…く、苦し…アレ、ルヤ…」
思いっ切り抱きしめられて、ティエリアは声もまともに出せない。
「あ、ごめんね」
慌ててアレルヤは力を緩める。
「─…はぁ…」
絶対にこの二人は、筋肉の使い方を間違っていると、肩で息をしながらティエリアは思う。
力は緩めたものの、まだ放そうとしない相手に抗議しようと顔を上げると、チャンスとばかりに右頬に、ちゅっと、キスをされてしまった。
「アレルヤ!」
「なに?」
にこにこと笑う相手に、どうしてくれようかと思っていると。
「おい、アレルヤ、いい加減放せよ」
ぐいっと引っ張られて、ティエリアはロックオンの腕の中へ。
「おまえは俺より、ティエリアと一緒のことが多いんだからさ」
それはミッション上のことだ。
「何言ってるんですか。」
ティエリアはアレルヤへと移動。
「今回は条件同じですよ」
同じミッションで、同時刻に地上に降りたのだから。
「それにロックオンの方が沢山、ティエリアに触ってるでしょう?」
なんだ、それは。
「あ、独り占め無しだぞ」
「それは、こっちの─」
「──いい加減にして下さい!二人とも!」
耐えきれなくなり、ティエリアが叫んだ。
本人の意向を無視するにもほどがある。
「いったい、何なんですか!?ロックオン!アレルヤ!」
いつもいつもいつも。

「そりゃあ、」
「だって、」

「ティエリアが好きだから」

ハモるな。
大の男が嬉しそうに。

「─あ…」
多大なショックに今にも倒れそうな目眩を覚えるが、辛うじて堪える。
ふらつきながら数歩進むと、また誰かがいて一瞬びくりとした。が、刹那だと分かって安堵する。
「なん─!?」
なんだ、君かと、言いかけた言葉は出なかった。
いきなり刹那の両手が頬を包み引き寄せられ、唇を重ねられたからだ。

「──」

「あーーっ!」
と、悲鳴を上げたのは大の男二人。

まさか、刹那までとは。
迂闊だったと思わぬ伏兵に青ざめる。

そんな二人を刹那は完全無視。唇を離すと静かに呟く。
「ただいま、ティエリア」
「…お、か、えり…」
「ひどいよ、刹那にだけなんて!」
ティエリアの応えにアレルヤが不満を言う。
「そう…って、ティエリア?!」
ロックオンも言いかけたが、どうもティエリアの様子がおかしいと気付く。
それもそのはず、それでなくても目眩を起こしかけていたのに、刹那の行動は予想外過ぎてティエリアはショック状態なのだ。
刹那に応えたのも条件反射。現在、ティエリアは思考も機能も停止中なのだ。

「おい、ティエリア!しっかりしろ!」
「ティエリア!」



刹那参戦、どうなるティエリア争奪戦!?

マイスター達の明日はいかに!?











愛されまくりティエリアは書いてて楽しいです(うふっ)

080512