「何をする!?」
「おまえらが目の前でいちゃいちゃするもんだから、アレルヤの奴がぐちぐちとウルサくてなぁ」
「な、に…?」
「それを解消してやらねぇと、鬱陶しくてなんねぇ」
「何のことだ?酔っているのか、君はっ」
ハレルヤからは酒の臭いがする。
「ぜ〜んぜん、素面だぜ」
「とにかく、放せ!」
突き放そうとした腕は難なく捕らえられ、頭の上に両手首を一つに掴みあげられてしまう。
「痛っ…!」
「暴れるとケガすんぜ」
にやりとされ、シャツの襟元に手がかけられて、ようやくハレルヤの意図することが分かり、ぞっと悪寒が走る。
「よせっ!ハレルヤ!」
ボタンが一つ、むしり取られる。
「やめろ…っ…」
「貴様、何をしている」
地を這うような低い声がした。
振り向くと、ロックオンが立っていた。
今まで見たことのない鋭く冷たい視線が、ティエリアを押し倒している人物を刺す。
「ロックオン…!」
ティエリアは力の緩んだハレルヤの下から抜け出し、ロックオンの傍へ走り寄る。
「大丈夫か?」
「はい…」
ロックオンはティエリアをその背に庇うように立ち、再び鋭い眼光をアレルヤへと向けた。
「旦那のおでましってか」
その眼光を受けても、テーブルに腰かけてへらへらと笑っている。
「おまえ…ハレルヤか?」
「いーところなんだから、邪魔すんじゃねぇよ」
「何だと?」
ロックオンの眉がぴくりと引き攣り、一歩ハレルヤへと近付く。
その全身からは怒りが噴き出ている。
「なんだよ、やる気か?」
「当然だ」
「おもしれぇ。超兵である俺様とやるってかあ」
ハレルヤも立ち上がり、二人は対峙した。
ぴりとした緊張が走る。
――と。
《狙イ撃ツゼ、狙イ撃ツゼ》
電子音の輪唱が飛び込んできた。
ハロ達だった。
カラフルな兄弟たちはハレルヤ目がけて飛びかかっていく。
「なんだよ、このっ、球体どもっ」
取り囲み、ぐるぐると飛びまわるハロ達に、流石のハレルヤも勝手が違うようだ。
払い落そうとするがハロ達の方がそれを素早く回避している。
「―このっ…」
《狙イ撃ツゼ!》
ガンッ!!
――あ…――
二人は心中思わず声を上げた。
オレンジのハロがハレルヤの顔面―しかもど真ん中の鼻―に直撃したのだ。
あれはかなり痛い。
ロックオンの気も削がれてしまった。
暫くして――
床に座り込んでいた超兵が鼻を押さえて立ち上がった。
「〜〜痛っ…」
ロックオンとティエリアは身構える。
「いったい、何が…あれ?ロックオンにティエリア?どうしたの?」
涙目になってこちらを見ている。どうやらアレルヤに戻ったらしい。
「…あれ?どうして僕はここに?」
「覚えてないのか?」
「う…ん、部屋でリヒティに借りたDVD見ながら呑んでて…眠くなって…それから記憶がないみたい」
へへっと申し訳なさそうに苦笑する。
確かにアレルヤだ。
「本当に覚えてないのか?」
「え、うん…」
ロックオンが疑わしそうに睨んでくるのを不思議に思いながら答える。
「あの…僕、何かした?」
「おまえな、」
「ロックオン」
何か言いかけたロックオンをティエリアが静かに制した。
ロックオンは右手を腰に当て、大きく息を吐く。そして。
「いいか、アレルヤ。これからティエリアの半径3メートル以内に近付くな。いいな!?」
「ええっ?」
「戻るぞ」
驚くアレルヤはきれいに無視して、ロックオンはティエリアを抱き寄せるようにしてくるりと背を向ける。
《ロックオン、ロックオン》
「よくやったな、相棒」
《ハロ、偉イ?》
「ああ、お手柄だ」
《オ手柄、オ手柄、ハロ偉イ》
《偉イ、偉イ、ハロ偉イ》
ハロ達も輪唱しながら二人の後を追って出て行ってしまった。
「ロックオン、ティエリア…?」
いったい何があったんだろう。ロックオンがあんな事を言うなんて。
「誰か説明してよ…ハレルヤ、何か知ってるんじゃないのかい?―ハレルヤ?」
呼びかけても返事があるはずもなく。
途方に暮れたアレルヤが残されたのみだった。


それから暫く、ティエリアに近付けさせてもらえなかったのは言うまでもない――




 終


2010/02/25



ハレアレファンの方、すみません…