刹那の「ロクティエ観察日記」



○月×日

ここ数日、ロックオンとティエリアの様子がおかしい。
どちらかと言えば、ティエリアの方がより変だ。
もともと、他人の近くにあまり来る奴ではなかったが、避けるというタイプでもなかった。
それが避けている。
しかもロックオンを。
この頃は一番よく話をしていたと思っていたのだが。
ミーティング中は特に変わりはない。
だが、それがすむとティエリアはロックオンと目が合うと逸らし、時にはそのまま部屋を出ることもある。
そしてロックオンはティエリアを追うのだ。
何となく、おかしな感じが漂うのだが、何なのだろう。

『ティエリア!』
『何の用です?』
『何のって、分かってるだろう?』
『あなたこそ、分かっているのでしょうから、来ないでください』
『冗談!早く慣れるためにも―』
『そのうち慣れます』
『それじゃ、俺が持たない』
『ロックオン…!』

いったい、何の話なのだろう。
俺にはさっぱり分からない。



○月△日

朝からまた二人は追いかけっこをしていた。
今日はオフだから別に構わないが。

その二人が一緒に休憩室にいた。
並んで座っているのかと思えば、その間にハロがいた。
ロックオンがティエリアの方に手を伸ばすと、ハロが飛び跳ねる。
《ダメダメ、ロックオン、ダメダメ》
『ハロ、おまえどっちの味方なんだよ…』
《ハロハロ、ティエリア》
『…ったく』
『ロックオン、その…』
『ま、いいけどさ』

何がいいんだろうか。



○月□日

ロックオンとアレルヤがミッションで地上に降りた。
ティエリアと俺も念のため待機をしていた。
ミッションは予定通りかと思えたが、三十分ほどズレが生じた。
予定時刻を過ぎた頃から、ティエリアの様子が変わってきた。
落ち着かない、とでもいう感じだろうか。

「どうした?」
俺は何故か訊いていた。
「ロックオ…、いや、この程度のミッションで遅延するなど有り得ない」
なんだ、怒っていたのか―だったら。
「本人に言えばいい」
「…ああ」


「よお、刹那、ティエリア見なかったか?」
プトレマイオスに帰ってきたロックオンは呑気に言った。
「部屋じゃないのか―ロックオン」
「なんだ?」
「あいつ、怒っていた」
「は?」
「ミッションの遅れだ」
ロックオンは初め、怪訝な顔をしていたが、急に嬉しそうな表情に変わった。
「サンキュ、刹那」
さも嬉しそうに言って、部屋の方へ向かった。

なんだ?
怒られるかもしれないことが、こいつは嬉しいのか?


『――してくれてたんだろ?』
『してません!心配なんか…』

あの二人だ。
また通路でやっている。

『俺としては今、すっごくそうしたい』
『……』
『ほんの少し、抱きしめるだけだから』
『…う、そ…』
『まぁ、ほんの少しってのは嘘かな』
『―!』

二人は声を潜めているし、展望室に入ってしまって、よく聞こえない。

入口から覗いてみると、ロックオンがティエリアを部屋の奥まで追いつめて、その体を挟むように壁に両手をついている。

『結構、我慢したよなぁ俺、褒めてくれてもいいくらい』
『それは…分かっています』
『けど、もう限界』
『ロックオ…』
『ティエリア…』

やはり声はよく聞こえない。
怒っているのはティエリアではなく、ロックオンなのか?
もう少し近付いてみようとしたとき、むんずと襟首を掴まれた。
アレルヤだった。
「覗きなんて悪趣味だよ、刹那。第一、君にはまだ早いよ」

覗き?悪趣味?
俺にはまだ早い?
何の事だ?

さっぱり分からない。

「――」

やはり暫くは観察を続けようと、アレルヤに引きずられながら俺は思ったのだった。










*ちょこっと後書き*                                                 
ティエリアは人に慣れてない感じがあって、それが恋愛感情なら尚更だろうな〜って思ったんですね。

で、それなら今や絶滅した(笑)プラトニックラブとか有りかもと。
「好きだから、傍に来ないで」ってやつですな。
でもそれはロックオンには辛かろうて(笑)

それに、そういうのは端から見てる方が楽しいだろうとこうなりました(苦笑)
刹那ファンの方にはすみませんです(汗)



080410