アレルヤの受難!?


お昼時。
アレルヤが食堂に入ろうとしたとき、中から楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
誰かと見ると、リヒティにクリス、ロックオンとそれに、ティエリアが一つところで談笑をしていた。
意外な気持ちと安堵のような気持ちの半々でアレルヤはその様子を見た。
「今からか?アレルヤ」
気付いたロックオンが軽く手を上げて声をかける。
「ええ」
「あっ、もうこんな時間!戻るわよ、リヒティ」
「え、は、はい―じゃ、お先っス」
ばたばたとリヒティとクリスは食堂を出ていった。
カウンターへ昼食の乗ったトレイを取りに行く。
ロックオンとティエリアは、まだテーブルに着いてコーヒーを飲んでいる。
「…リヒテンダールの話はよく分からない」
「ん?ああ、あれはな、――」
困惑したようにティエリアは呟き、隣に座っているロックオンはそれに応えている。
聞くつもりはないけれど、つい気になってしまう。
何となく近くには行き辛くて少し離れたところにアレルヤは席を取った。
トレイに乗った食器が小さく音をたてる。
――……――
この最近、ロックオンとティエリアは時間があれば一緒にいるようだった。
それもとても、仲睦まじくアレルヤには見えて。
特別にどうこうしているわけではない。
ただ一緒にいて、話をしていたりするだけなのに。
二人のことはロックオンから聞いた。
だからだろうか。
二人を見る度にそう感じてしまうのは。
意識しすぎなのかもしれない。
アレルヤは一つ、溜息を吐いた。
「どうした、アレルヤ?悩み事か?」
不意に声がしてアレルヤは、はっとする。
「えっ?あ、ううん、何でもないよ」
何時の間にか、近くに来ていたロックオンに首を振る。
「そうか…じゃ、お先な」
そう言うと、ロックオンはティエリアの所に戻り、二人は連れ立って食堂から出ていった。
「……」
その様子を何となくもやもやしつつ、アレルヤは見送り、食事を始めた。



その日はいつにもまして、二人が目についた。
ブリーフィングのときも、夕食のときも。
夕食の前には二人がティエリアの部屋から出てきたし。
そのまま誘われて一緒に食堂に行ったのだけれど、やはり気不味くて―刹那もいたのだが―早々に食事を切り上げて自室に戻ってしまった。
アレルヤはどさりとベッドに腰を下ろす。
―何でこんなに気になるんだろう…―
『ぐだぐだとうっせー奴だな、おまえは』
「ハレルヤ…」
『気になるんなら、やっちまえばいいだろーが』
「やるって何を?」
『あー?気付いてねぇのかよ』
「何言ってるんだよ、ハレルヤ。僕は二人の邪魔なんかする気はないからね」
アレルヤは立ち上がり、備え付けの冷蔵庫から缶ビールを取り出す。
そう言えば、出ている女の子が可愛いからとリヒティから渡されたままになっているDVDがあった事を思い出し、付けて見る。
内容は、気の弱い男の子がなかなか気持ちを好きな女の子に伝えられないというごくありふれたラブコメディだ。
まあ、気を紛らわすにはちょうどいいかなと、何となく見続ける。
缶ビールは三本に増えていた。
ビールにも飽きて、ウィスキーに変える。
《そんなだから、ダメなんでしょう!》
画面では主人公に幼馴染みの女の子が発破をかけているところだ。
《だ、だけどさ…》
《ほら、もっとちゃんとして――あ、そうだ。おまじないしてあげるね》
《ええっ?いいよ、そんなの…》
《いいから、これを見て》
女の子が取り出したのは、穴のあいたコインに紐を通したもの。
あれはおまじないじゃないし、それに何と古風なと思い苦笑する。
ゆらゆらとコインを揺らして女の子は主人公に囁く。
《強くなーれ、強くなーれ》
その台詞に苦笑いしつつ、アレルヤはずるずると机に伏せて、重くなった瞼を閉じた。




ティエリアは切らしてしまったミネラルウォーターを取りに、食堂に入った。
と、その冷蔵庫の前に誰かがいる。
アレルヤだった。
気配に気づいたアレルヤが振り返る。
けれど何だか様子がおかしい。
いつもならすぐに声をかけてくるのに、黙ったままだ。
「…アレルヤ?」
「―おんや、一人か?」
「ああ…」
この口調、もしかして。
「ハレルヤ、か?」
「おうよ。ちょーどいいや、ティエリアさんよぉ」
無遠慮に近付いてくるハレルヤに思わず後ずさる。
「逃げんなよ。ちょっと相談があんだよ」
「相談?君が?」
「ああ、アレルヤのことでな」
「アレルヤの…――!?」
いきなり肩を掴まれたと思うと、そのままテーブルに押し倒される。


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